うつ状態が続くと、「何をしても気分が上がらない」「自分を責める考えが止まらない」と感じることがあります。認知行動療法(CBT)は、こうした考え方や行動のパターンに目を向け、気分との関係を整理しながら、日常生活での対処法を身につけていく心理療法です。ここでは、うつに対するCBTの考え方や具体的な進め方、オンラインで相談する場合のポイントを解説します。

認知行動療法(CBT)とは何ですか?

認知行動療法(CBT)は、出来事に対する考え方や行動のパターンに目を向け、気分の落ち込みやつらさとの関係を整理していく心理療法です。うつでは、「自分には何もできない」「どうせうまくいかない」といった考えが繰り返し浮かぶことがあります。

CBTでは、こうした自動的に浮かぶ考えを「自動思考」と呼び、その内容や根拠を一緒に確認します。

たとえば、上司から「報告書を修正してほしい」と言われたとき、

  • 「自分は仕事ができない」と受け取る
  • 「改善するための指摘をもらった」と受け取る

というように、同じ出来事でも、その受け止め方によって気分やその後の行動が変わることがあります。

CBTでは、単に「前向きに考えましょう」と促すのではありません。実際に起きた出来事と、そのときに浮かんだ考えを分けて整理し、別の見方ができるかを検討していきます。

また、考え方だけでなく行動にも目を向けます。うつ状態では、外出や人との交流、仕事、趣味などを避けるようになり、活動量が減ることがあります。その結果、気分がさらに落ち込みやすくなる場合があります。

このような悪循環に対しては、うつ状態で行動することの意味を解説した記事でも紹介している「行動活性化」が用いられることがあります。

うつに対するCBTにはどのような効果がありますか?

うつに対するCBTは、気分の落ち込みなどの症状を軽減するために広く研究されている心理療法のひとつです。研究では、薬物療法と並ぶ治療選択肢として検討されており、治療終了後の再発予防にも役立つ可能性が示されています。

CBTの特徴は、セッション中に気分を楽にするだけではなく、うつ状態に対処するための考え方や行動の方法を身につけていく点にあります。

たとえば、次のようなパターンを整理することがあります。

  • 失敗すると「自分には価値がない」と考える
  • 気分が落ち込んで、人との連絡を避ける
  • 活動量が減り、気分転換の機会も少なくなる
  • さらに自分を責めるようになる

こうした悪循環を具体的に把握し、考え方や行動のどこから変えていけそうかを検討します。

一方で、CBTがすべての人に同じように適しているわけではありません。症状の程度やこれまでの経過、併存する問題などによって、医師による診察や薬物療法など、別の支援を組み合わせることもあります。

また、うつに対する心理療法にはCBT以外にも選択肢があります。治療法を比較したい場合は、CBT以外の心理療法についてまとめた記事も参考になります。

CBTのセッションでは実際に何をするのですか?

CBTでは、現在困っていることを整理したうえで、考え方や行動のパターンを具体的に検討します。セッションでは、カウンセラーと話すだけでなく、記録や練習を通して、日常生活でも使える対処法を身につけていきます。

進め方は個人によって異なりますが、たとえば次のような内容を扱います。

  • 現在の困りごとや目標を整理する
  • 気分が落ち込んだ場面を振り返る
  • そのときに浮かんだ自動思考を確認する
  • 考えを支える根拠や反証を検討する
  • より現実的な考え方を探す
  • 日常生活で試せそうな行動を考える
  • 次回までに取り組むことを決める

よく使われる方法のひとつが「コラム法」です。出来事、気分、自動思考、その考えを支える根拠や反証などを書き出し、別の見方ができないかを検討します。

たとえば、「会議で発言できなかった」という出来事に対して、「自分は何の役にも立たない」という考えが浮かんだとします。その場合、「本当にそう言える根拠はあるか」「反対の事実はないか」と一緒に確認していきます。

また、うつでは「行動したい気持ちはあるのに、何もする気になれない」という状態になることがあります。そのため、いきなり大きな目標を設定するのではなく、現在の状態に合わせて、実行できそうな小さな行動から検討することがあります。

「考え方のクセ」に気づくとはどういうことですか?

CBTでいう「考え方のクセ」とは、特定の状況で繰り返し現れやすい思考パターンのことです。自分では事実そのもののように感じていても、実際には一つの解釈である場合があります。

うつ状態では、たとえば次のような思考が繰り返されることがあります。

  • 「完璧にできなければ失敗だ」と考える
  • 一度の失敗から「いつも失敗する」と考える
  • できたことより、できなかったことばかりに目が向く
  • 自分の問題を必要以上に大きく捉える
  • 将来について「きっと悪くなる」と決めつける

大切なのは、こうした考えを無理に否定することではありません。「その考えは、どのようなときに浮かびやすいのか」「事実として確認できることは何か」と丁寧に検討していきます。

たとえば、「仕事でミスをしたから、自分には価値がない」という考えが浮かんだとします。CBTでは、「ミスをした」という事実と、「だから自分には価値がない」という解釈を分けて考えます。

そして、これまでの経験や現在の状況を振り返りながら、より現実に即した捉え方を探していきます。

このような作業を繰り返すことで、自分の考えを少し距離を置いて見られるようになることがあります。ただし、考え方がすぐに変わるとは限らず、無理のないペースで練習していくことが大切です。

日本でCBTを受けるにはオンラインでも利用できますか?

オンラインカウンセリングでも、CBTの考え方を取り入れた心理的な支援を受けられる場合があります。自宅など落ち着いて話せる場所から相談できるため、移動時間や通院の負担を減らしたい方にとって選択肢のひとつになります。

日本では、精神的な不調があっても「相談するほどではない」「どこに相談すればよいかわからない」と感じ、専門家への相談を先延ばしにすることがあります。そのような場合、オンラインで相談できるサービスを選択肢のひとつとして検討することもできます。

オンラインであれば、住んでいる地域にかかわらず、自分に合う相談先を探しやすいことがメリットです。Otulikaで利用できるオンラインで受けられるサービスについても、相談内容や利用方法を事前に確認できます。

ただし、オンラインカウンセリングと医療機関で行われるCBTは同じものではありません。医師による診断や薬の処方が必要な場合には、医療機関での診察が必要になります。

また、オンラインで相談するときは、周囲の人に会話を聞かれない場所を選ぶなど、プライバシーを確保できる環境を用意しておくと安心です。

CBTを始める前に知っておきたいことはありますか?

CBTはうつへの有効な心理療法のひとつですが、症状の程度や背景によって必要な支援は異なります。特に症状が強い場合や、双極性障害など別の精神疾患の可能性がある場合には、まず医療機関で状態を確認することが重要です。

また、CBTではセッション以外の時間に、思考を記録したり、小さな行動を試したりすることがあります。こうした取り組みは「宿題」と呼ばれることがありますが、毎回完璧にできなければ意味がないというものではありません。

できなかった場合も、

  • なぜ取り組めなかったのか
  • どの部分が難しかったのか
  • 目標が現在の状態に合っていたのか

をカウンセラーと一緒に振り返ることができます。

「うまく話せるかわからない」「自分の状態を説明できない」と感じている場合も、最初から整理して話す必要はありません。現在つらいと感じていることを、そのまま伝えるところから始められます。

よくある質問

認知行動療法はうつに本当に効果がありますか?

うつに対するCBTは、多くの研究で効果が検討されている心理療法のひとつです。薬物療法などと並ぶ治療選択肢として用いられています。ただし、適した治療法は症状の程度や個人の状況によって異なります。

認知行動療法は何回くらい受けるものですか?

CBTの回数や期間は、症状や目標、治療の進み方によって異なります。一定の回数で終了するプログラムもありますが、すべての人に同じ期間が必要になるわけではありません。

薬を飲みながらでもCBTを受けられますか?

薬物療法を受けながらCBTを行うことはあります。薬を服用している場合は、現在の治療内容をカウンセラーに伝えたうえで、必要に応じて主治医とも連携しながら進めることが大切です。

オンラインで受けるCBTにも効果はありますか?

オンラインで提供されるCBTについても、うつに対する有効性が研究されています。オンラインで受ける場合は、どのような支援が提供されるのか、担当者の資格や経験、医療機関との違いなどを確認して選ぶことが大切です。

うつへのCBTは、どのくらいで効果を実感できますか?

効果を感じるまでの期間には個人差があり、「何週間で必ず改善する」とは言えません。症状の変化だけでなく、自分の考え方や行動のパターンに気づけるようになることも、CBTで取り組む重要な変化のひとつです。

カウンセリングを受けることを周囲に知られたくない場合はどうすればいいですか?

オンラインカウンセリングなら自宅などから相談できるため、通院時に知人と会うことを避けやすいというメリットがあります。利用するサービスを選ぶ際には、予約方法や個人情報の取り扱い、プライバシーポリシーを事前に確認しておくと安心です。

CBTはカウンセリング未経験でも受けられますか?

はい。カウンセリングを受けたことがない方でもCBTに取り組むことはできます。最初のセッションでは、現在困っていることや相談したいことを整理しながら、どのように進めるかを一緒に確認していきます。

出典

  • Cuijpers P, Quero S, Noma H, Ciharova M, Miguel C, Karyotaki E, Cipriani A, Cristea IA, Furukawa TA. Psychotherapies for depression: a network meta-analysis covering efficacy, acceptability and long-term outcomes of all main treatment types. World Psychiatry. 2021 Jun;20(2):283-293. doi: 10.1002/wps.20860.
  • Andersson, G., & Carlbring, P. (2021). Cognitive behavioral therapy delivered using the internet. In A. Wenzel (Ed.), Handbook of cognitive behavioral therapy: Applications (pp. 607–631). American Psychological Association. https://doi.org/10.1037/0000219-019
  • Beck, A. T. (1979). Cognitive therapy of depression. Guilford Press.

もし今、気分の落ち込みや無気力などが続いていて、誰かに相談してみたいと感じているなら、まずは現在の状況を話すところから始めることもできます。オンラインで相談できるカウンセラーを探す

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