認知行動療法(CBT)は、うつや不安などに用いられる代表的な心理療法ですが、取り組み方が自分に合わないと感じることもあります。「頑張っているのに楽にならない」「考えを整理すること自体が負担になる」という場合も、セラピーを諦める必要はありません。この記事では、CBT以外の心理療法の特徴と、自分に合う方法を考えるときのポイントを紹介します。
認知行動療法が合わないと感じるのはなぜ?
認知行動療法が合わないと感じる理由は人によって異なり、思考を記録・分析する方法が負担になったり、現在の人間関係や過去の経験を扱う必要があったりするためです。療法との相性は、本人の性格や悩み、治療の目標によっても変わります。
認知行動療法では、状況によって生じる考え方や感情、行動のつながりに目を向けながら、現在の困りごとの改善を目指します。多くの研究で有効性が検討されている一方、誰にとっても同じ方法が取り組みやすいとは限りません。
たとえば、次のようなことが負担になる場合があります。
- 思考や感情を記録すること自体がストレスになる
- 「正しく考えなければ」と自分を責めてしまう
- 考えを分析するほど、頭の中で考え続けてしまう
- 現在の悩みだけでなく、対人関係や過去の経験も整理したい
- 思考を変えることより、自分の感情との付き合い方を考えたい
また、療法そのものだけでなく、カウンセラーとの相性や、セッションの進め方が自分に合っていない可能性もあります。そのため、「CBTが合わない=心理療法が自分には向いていない」と考える必要はありません。
CBT以外にも、考え方や感情、人間関係、過去の経験など、異なる側面から悩みにアプローチする心理療法があります。まずは自分が何を変えたいのか、どのような相談の進め方なら取り組みやすいのかを整理してみるとよいでしょう。
選択肢①:アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)とは?
ACTは、不快な考えや感情を無理に消そうとするのではなく、それらを抱えたままでも、自分が大切にしたいことに沿って行動できるようになることを目指す心理療法です。思考そのものを変えることだけを目標にしない点が特徴です。
ACTでは、つらい感情や不安な考えを「なくさなければならないもの」として扱うのではなく、その存在に気づきながら、自分にとって大切な方向へ行動することを考えます。
たとえば、仕事で強いプレッシャーを感じているとき、「不安にならないようにする」ことだけを目指すのではなく、不安があっても今できる行動は何か、自分にとって大切なことは何かを考えていきます。
ACTについては、うつや不安、慢性的な痛みなど、さまざまな問題を対象とした研究が行われています。A-Tjakらによるメタ分析では、ACTの有効性が幅広く検討され、従来の認知行動療法と比較して大きな差がないことも報告されています。
そのため、「考え方を変えようとすることに疲れてしまった」「つらい感情をなくそうとするほど苦しくなる」と感じている場合には、ACTという考え方が選択肢になることがあります。
選択肢②:対人関係療法(IPT)とは?
対人関係療法(IPT)は、現在の人間関係や生活上の変化と、気分の落ち込みなどとの関係に焦点を当てる心理療法です。特に、喪失、役割の変化、対人関係の葛藤、対人関係上の孤立などを整理しながら、現在の生活を立て直していきます。
たとえば、次のような出来事がきっかけで気分の落ち込みや不安が強くなっている場合があります。
- 大切な人との別れや死別を経験した
- 転職や昇進、結婚、出産などで生活上の役割が変わった
- 家族やパートナー、職場の人との関係で葛藤が続いている
- 周囲との関係が減り、孤独を感じている
IPTでは、こうした現在の対人関係を整理し、コミュニケーションや人との関わり方について考えていきます。思考の内容を細かく分析することだけに重点を置かないため、人間関係の変化が現在のつらさに大きく影響している方には検討しやすい方法です。
対人関係療法について詳しく知りたい場合は、対人関係療法(IPT)とはどのような心理療法なのかも参考になります。
選択肢③:スキーマ療法とは?
スキーマ療法は、これまでの経験から身についた、深く根づいた考え方や感じ方のパターンに注目する心理療法です。現在の反応だけでなく、そのパターンがどのように形成され、現在の人間関係や行動にどう影響しているのかを丁寧に扱います。
たとえば、「自分は大切にされない」「失敗すると価値がない」といった感覚が、仕事や恋愛、人間関係などさまざまな場面で繰り返されることがあります。
スキーマ療法では、そのようなパターンを単純に「間違った考え」として修正するのではなく、過去の経験やそのときに身についた対処の仕方との関係を考えていきます。
そのため、次のような悩みが長く続いている場合には、選択肢の一つになることがあります。
- 同じような人間関係の問題を繰り返してしまう
- 頭では分かっていても、同じ反応をしてしまう
- 自分に対する否定的な感覚が長く続いている
- 過去の経験が現在の人間関係にも影響していると感じる
スキーマ療法は、短期間で一つの症状を改善することだけを目的とするのではなく、自分の中にある長期的なパターンを理解し、変化させていくことを目指します。そのため、扱うテーマや進め方によっては、比較的長期にわたることがあります。
選択肢④:マインドフルネスベースの療法(MBSR・MBCT)とは?
MBSRやMBCTは、呼吸や身体感覚、思考などに意識を向け、「今ここ」で起きていることに気づく力を身につけていくアプローチです。考えを無理に変えようとするのではなく、思考や感情との距離の取り方を学ぶ点に特徴があります。
マインドフルネスを取り入れた心理療法では、「この考えをどう変えればよいか」と考え続ける代わりに、「今、自分の中で何が起きているのか」に注意を向けます。
たとえば、不安な考えが浮かんだときに、その内容を何度も検討するのではなく、「今、不安を感じている」「こういう考えが浮かんでいる」と気づき、そのまま観察する練習を行います。
MBCTについては、うつ病の再発予防を目的とした研究が行われており、Kuykenらの研究では、再発リスクの高い人に対する有効性が検討されています。
「考えすぎて頭が休まらない」「考えを変えようとすることそのものが負担になる」と感じている場合には、このようなアプローチが合う可能性があります。ただし、マインドフルネスがすべての人に適しているわけではないため、現在の状態や目的に合わせて専門家と相談することが大切です。
自分に合う療法はどうやって選べばいい?
自分に合う心理療法は、抱えている悩み、症状、これまでの経験、希望する相談方法などによって異なります。特定の療法を最初から決めるより、何について困っていて、どのような変化を望んでいるのかをカウンセラーに伝え、進め方を相談することが大切です。
たとえば、療法を選ぶときには次のような点を整理しておくと役立ちます。
- 今、一番困っていることは何か
- いつ頃から悩みが続いているか
- 過去にカウンセリングや心理療法を受けたことがあるか
- どのような方法なら無理なく取り組めそうか
- セッションを通じて、どのような変化を望んでいるか
また、「合う・合わない」を判断するときは、療法だけでなくカウンセラーとの相性も重要です。説明が分かりやすいか、自分の話を安心してできるか、相談の進め方について希望を伝えられるかなども、継続して相談するうえで大切なポイントです。
最初から特定の心理療法を選ぶことに迷う場合は、オンラインカウンセリングで利用できるサービスを確認して、どのような相談先があるのかを比較してみる方法もあります。
オンラインで相談する場合は、通いやすさだけでなく、対応している相談内容、カウンセラーの専門分野、料金、予約方法なども確認しましょう。オンラインサービスを選ぶときのポイントも、相談先を検討するときの参考になります。
カウンセリングを始めたあとに「この方法は自分には合わないかもしれない」と感じた場合も、そのことをカウンセラーに伝えて構いません。進め方を調整したり、別のアプローチを検討したりすることができます。
よくある質問
認知行動療法が合わないと感じたら、すぐに別の療法に切り替えてもいいですか?
はい、別の方法を検討することはできます。ただし、自己判断ですぐに中断するのではなく、まずカウンセラーに「合わないと感じている」と伝えてみることをおすすめします。進め方を調整することで取り組みやすくなる場合もありますし、別の心理療法が適しているか一緒に検討することもできます。
認知行動療法が合わないと感じやすいのはどんな人ですか?
「CBTが合わない」と感じる理由は人によって異なります。思考の記録や分析が負担になる方、現在の人間関係を中心に相談したい方、過去の経験も含めて自分のパターンを理解したい方などでは、別のアプローチのほうが取り組みやすい場合があります。
ACTと認知行動療法はどう違いますか?
CBTでは、状況に対する考え方や行動のパターンを見直すことが重視されます。一方、ACTでは、不快な思考や感情を無理に変えようとせず、それらと付き合いながら、自分にとって大切な行動を選ぶことを重視します。どちらが優れているということではなく、相談する人の悩みや目的によって適した方法は異なります。
オンラインカウンセリングでもさまざまな心理療法を受けられますか?
オンラインでも、カウンセラーによってCBT、ACT、対人関係療法、マインドフルネスを取り入れたアプローチなどを利用できる場合があります。ただし、対応している心理療法や相談内容はカウンセラーごとに異なるため、予約前に確認することが大切です。
何回くらいセッションを受ければ、自分に合うか分かりますか?
何回で判断できるかに一律の基準はありません。相談内容や療法によっても異なるため、回数だけで判断するより、安心して話せるか、相談の方向性に納得できるか、負担なく取り組めているかなどを振り返ることが大切です。違和感がある場合は、そのこと自体をカウンセラーに伝えてみましょう。
カウンセリングの費用はどのくらいかかりますか?
カウンセリングの料金は、サービスやカウンセラー、相談時間などによって異なります。料金だけでなく、継続して利用できるか、相談したい内容に対応しているか、オンラインか対面かなども含めて比較すると、自分に合う相談先を選びやすくなります。
スキーマ療法はどのくらいの期間かかりますか?
スキーマ療法に必要な期間は、相談内容や目標、これまでの経験などによって異なります。幼少期から続くパターンなど、時間をかけて形成されたテーマを扱う場合は、短期間で終わるとは限りません。具体的な期間については、初回の相談でカウンセラーと目標や進め方を確認するとよいでしょう。
出典
- A-Tjak JG, Davis ML, Morina N, Powers MB, Smits JA, Emmelkamp PM. A meta-analysis of the efficacy of acceptance and commitment therapy for clinically relevant mental and physical health problems. Psychother Psychosom. 2015;84(1):30-6.
- Cuijpers, P., et al. (2016). Interpersonal psychotherapy for mental health problems: A comprehensive meta-analysis. American Journal of Psychiatry, 173(7), 680–687. https://doi.org/10.1176/appi.ajp.2015.15091141
- Kuyken, W., et al. (2016). Efficacy of mindfulness-based cognitive therapy in prevention of depressive relapse. JAMA Psychiatry, 73(6), 565–574. https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2016.0076
- Farrell, J. M., Shaw, I. A., & Webber, M. A. (2009). A schema-focused approach to group psychotherapy for outpatients with borderline personality disorder: A randomized controlled trial. Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 40(2), 317–328. https://doi.org/10.1016/j.jbtep.2009.01.002
認知行動療法が合わないと感じても、それだけで心理療法そのものを諦める必要はありません。今の悩みや希望に合う方法をカウンセラーと相談しながら探していくことができます。Otulikaについて詳しく知りたい場合は、オンラインで相談できるカウンセラーを探すことから始めてみてください。
