双極性障害は、誰もが経験する「気分の浮き沈み」とは異なる、脳の機能に関わるこころの状態です。双極性障害のサインを早い段階で知っておくことは、自分や大切な人を守る第一歩になります。この記事では、よくある気分の波との違い、見落とされやすいサイン、そして専門家への相談をためらわずに考えられるヒントをお伝えします。カウンセリングに行ったことがない方でも、まずは「知る」ことから始めてみませんか。
双極性障害とは何か:基本をおさえる
双極性障害は、気分が非常に高まる「躁状態(そうじょうたい)」と、落ち込みが深まる「うつ状態」が繰り返し現れる状態です。以前は「躁うつ病」とも呼ばれていました。日本では100人に約1人が経験すると言われており、決して珍しいことではありません。
この状態は、単なる「気分屋」や「感情が豊か」とは本質的に異なります。気分の変化が日常生活や仕事、人間関係に大きな影響を与えるほどの強さと持続性を持つのが特徴です。
たとえば、数日間ほとんど眠らなくてもエネルギーがあふれる感覚が続いたり、翌週には布団から出られないほど落ち込んだりといった波が繰り返される場合、専門家への相談を考えてみる価値があります。
双極性障害のサイン:見落とされやすいポイント
双極性障害のサインとして広く知られているのは、強い躁状態(眠れなくてもハイテンション、浪費、怒りっぽいなど)ですが、実際には気づきにくい形で現れることも多いです。
特に「軽躁状態(けいそうじょうたい)」と呼ばれる、躁よりも軽い高揚感は、「調子がいい」「仕事がはかどる」と本人が感じるため、問題として認識されにくい傾向があります。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の調査でも、診断までに平均で数年かかるケースが報告されています。
以下のような変化が繰り返しみられる場合、双極性障害のサインである可能性があります。
- 睡眠がほとんど必要ない時期と、いくら寝ても眠い時期が交互に来る
- 衝動的な大きな決断(転職、引っ越し、高額な買い物)をしやすい時期がある
- 普段よりも自信があふれ、口数が多くなる時期がある
- その後、急激にやる気がなくなり、自分を責める時期が来る
「気分の波」との違いはどこにあるのか
日常的な気分の浮き沈みと、双極性障害のサインを区別するうえで大切なのは「強さ」「持続期間」「生活への影響」の3点です。嫌なことがあって落ち込む、うれしいことがあって気分が上がる、というのは誰にでもある自然な反応です。
一方、双極性障害の気分の変化は、はっきりしたきっかけがなくても起こることが多く、数日から数週間単位で続く傾向があります。また、その間の自分の行動や感情が、後から振り返ると「あのときはおかしかった」と感じられることがあります。
たとえば、職場で理不尽なことがあって数日落ち込むのは自然なことです。しかし、特別な理由がないのに2週間以上ほとんど動けない状態が続いたり、逆に3日間ほとんど眠らずに仕事を続けてもまったく疲れを感じないような状態が現れたりする場合は、専門家に話してみるのも一つの方法です。
双極性障害に気づきにくい理由:日本の文化的な背景
日本では、「つらくても我慢する」「人に迷惑をかけたくない」という気持ちが強く根づいています。そのため、こころの不調を感じても「自分の弱さだ」「気合いで乗り越えればいい」と考えてしまいがちです。
また、躁状態のときは本人が「調子がいい」と感じているため、そもそも問題として気づかないこともあります。周囲の家族や友人が「なんか最近テンションがおかしいな」と感じる場合の方が、気づきのきっかけになることも少なくありません。
厚生労働省の調査でも、精神的な不調を感じながらも専門機関を受診しない理由として「自然に治ると思った」「受診するほどではないと思った」という回答が上位を占めています。「まだ大丈夫」という感覚が、必要なサポートへのアクセスを遅らせてしまうことがあるのです。
双極性障害は治療で安定できる状態です
双極性障害は、適切なサポートがあれば、多くの方が安定した日常生活を送ることができる状態です。薬物療法(気分安定薬など)と心理療法(認知行動療法など)を組み合わせることで、気分の波をゆるやかにしていくことが可能とされています。
2021年にLancetに掲載されたレビューでは、双極性障害に対する心理社会的介入が再発予防に一定の効果をもたらすことが示されています。薬だけでなく、カウンセリングを通じて自分の気分のパターンを理解したり、ストレスへの対処法を身につけたりすることが、長期的な安定につながるとされています。
「病院に行くのはハードルが高い」と感じる方は、まずオンラインカウンセリングで話を聞いてもらうことから始めてみるのも一つの方法です。プライバシーが守られた環境で、自分のペースで話せる場があります。
専門家への相談を考えるタイミング
「自分は双極性障害かもしれない」と感じたとき、多くの方が「大げさかな」「違うかもしれないし」と思って足を止めてしまいます。でも、専門家への相談はあくまで「話を聞いてもらう場」です。診断を受けることを決める前に、まず自分の状態を言語化してみることが大切です。
以下のような状況が続いている場合、専門家と話してみるのを検討してみませんか。
- 気分の変化が激しく、自分でもコントロールが難しいと感じる
- 仕事や人間関係に支障が出ている時期が繰り返される
- 「ハイな時期」と「落ち込む時期」が交互に来ると気づいている
- 家族や友人から「最近おかしい」と言われたことがある
オンラインカウンセリングは自宅から受けられるため、周囲に知られる心配が少なく、スケジュールも調整しやすいのが特徴です。1回あたりの料金も、¥5,000〜¥12,000程度が相場で、初回を試してみることから始められます。
よくある質問
双極性障害のサインにはどのようなものがありますか?
代表的なサインとして、睡眠が極端に少なくても元気な時期、衝動的な行動や発言が増える時期、その後に深い落ち込みが来る波の繰り返しなどがあります。気分の変化がはっきりしたきっかけなく起こり、数日〜数週間続く場合は専門家に相談してみるのも一つの方法です。
普通の気分の浮き沈みと双極性障害は何が違うのですか?
日常的な気分の波は、出来事に反応して起こり、比較的短期間で落ち着く傾向があります。双極性障害の場合は、きっかけがなくても気分の変化が起きやすく、生活や仕事に大きな支障が出るほどの強さと持続性があるのが違いです。
双極性障害は自然に治りますか?
双極性障害は自然に消えるものではなく、適切なサポートが必要とされています。ただし、薬物療法や心理療法を組み合わせることで、多くの方が安定した生活を送れるようになっています。早めに専門家に相談することが、長期的な安定につながる可能性があります。
カウンセリングは双極性障害に効果がありますか?
はい、心理療法はサポートの重要な一部とされています。2021年にLancetに掲載されたレビューでは、心理社会的介入が双極性障害の再発予防に一定の効果を示すことが報告されています。カウンセリングを通じて気分のパターンを理解し、ストレス対処法を身につけることが、症状の安定に役立つとされています。
双極性障害はどのくらいの人がなるのですか?
世界的には人口の約1〜2%が双極性障害を経験すると言われており、日本でも100人に約1人とされています。WHOのデータでも、双極性障害は世界的に見て生活の質に大きな影響を与える状態の一つとして挙げられています。
職場のストレスが原因で双極性障害になることはありますか?
ストレスは双極性障害の症状を引き起こしたり悪化させたりするきっかけになることがありますが、ストレスだけが原因とは言えません。遺伝的な要因や脳の機能も関わっていると考えられています。ただ、長期的な職場ストレスがこころの状態に影響を与えることは確かなため、早めにサポートを求めることが大切です。
オンラインカウンセリングで双極性障害について相談できますか?
はい、オンラインカウンセリングで自分の気分の波についてカウンセラーに話すことができます。ただし、診断は医師(精神科・心療内科)が行うものです。カウンセリングは、自分の状態を整理したり、日常生活の中での対処法を一緒に考えたりする場として活用できます。
出典
- 世界保健機関. (2022). Bipolar disorder fact sheet. WHO.
- 国立精神・神経医療研究センター. (2023). 精神疾患に関する疫学調査および診療実態調査. NCNP.
- 厚生労働省. (2020). こころの健康に関する実態調査. 厚生労働省.
- Geddes, J. R., & Miklowitz, D. J. (2013). Treatment of bipolar disorder. The Lancet, 381(9878), 1672–1682. The Lancet
- Miklowitz, D. J., et al. (2021). Psychosocial interventions for bipolar disorder: Perspectives from Lancet Psychiatry. The Lancet Psychiatry.
- American Psychiatric Association. (2022). What are bipolar disorders?. APA.
- Merikangas, K. R., et al. (2011). Prevalence and correlates of bipolar spectrum disorder in the World Mental Health Survey Initiative. Archives of General Psychiatry, 68(3), 241–251. PubMed
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