「言いたいことがうまく伝わらない」「話し合おうとすると、いつも言い争いになってしまう」と感じることはありませんか。親しい関係だからこそ、気持ちを言葉にするのが難しい場合があります。この記事では、パートナーとのすれ違いを減らすために、自分の感情を整理する方法や伝え方、話すタイミング、相手の話を聴く姿勢について、日常で実践しやすい形で紹介します。
なぜパートナーへの伝え方はむずかしいのか
パートナーへの気持ちが伝わりにくいのは、親しい関係だからこそ「言わなくてもわかってほしい」という期待が生まれやすいためです。期待と実際の受け止め方に違いがあると、寂しさや怒り、失望につながることがあります。
たとえば、仕事で疲れて帰宅したとき、「今日は少し一人でいたい」と思っていても、それを言葉にしなければ、相手には「機嫌が悪いのかな」「避けられているのかな」と伝わってしまうかもしれません。
このように、本人にとっては明らかな気持ちでも、相手から見るとわからないことは少なくありません。特に長く一緒にいるほど、「これくらいはわかってくれるはず」と考えてしまいやすくなります。
また、気持ちを率直に伝えることへの恥ずかしさや遠慮から、言いたいことを我慢してしまう場合もあります。言葉にしないまま不満が積み重なると、些細な出来事をきっかけに感情が一気に表れることもあります。
そのため、コミュニケーションを改善するときは、「相手にどう伝えるか」だけでなく、「自分が何を感じているのか」を確認することから始めることが大切です。
気持ちを伝える前に「感情を言語化」してみる
パートナーに気持ちを伝える前に、自分が何を感じているのかを具体的な言葉にすると、伝えたい内容を整理しやすくなります。「モヤモヤする」という感覚を、悲しさ、寂しさ、不安、怒り、疲れ、失望などに分けて考えてみましょう。
心理学では、自分の感情に言葉を与えることを「感情のラベリング(affect labeling)」と呼びます。感情を言葉にすることと感情反応との関係については研究も行われており、感情を言語化することが気持ちを整理する助けになる場合があります。
話す前に、次のような問いを使って整理してみるのも一つの方法です。
- 私は今、何を感じている?
- 何がきっかけでそう感じた?
- 本当は相手に何をわかってほしい?
- 相手にどんな行動をしてもらえるとうれしい?
- 今すぐ話したいことなのか、少し落ち着いてから話したほうがよいことなのか?
たとえば、「連絡が遅くて腹が立った」という言葉の奥に、「何かあったのではないかと心配だった」「自分のことを大切に思っているのか不安だった」という気持ちがあるかもしれません。
自分の感情を整理できると、相手を責める言葉ではなく、自分の状態や希望として伝えやすくなります。自分の気持ちを整理し、言葉にすることについては、自分の気持ちを表現するためのアサーションについての記事も参考になります。
「Iメッセージ」で伝えると受け取りやすくなる
「あなたはいつも〜」と相手を主語にするのではなく、「私は〜と感じた」「私は〜してもらえるとうれしい」と、自分の気持ちや希望を伝えると、相手を責める形になりにくくなります。
たとえば、「あなたはいつも連絡をくれない」と言う代わりに、「連絡がないと、私は心配になってしまう」と伝える方法があります。後者では、相手の人格や行動を一方的に評価するのではなく、自分に起きている感情を伝えています。
Iメッセージを使うときは、次のような形にすると整理しやすくなります。
- 「〇〇があると、私は△△と感じます」
- 「私は〇〇してもらえると安心します」
- 「〇〇のときは、少し不安になります」
- 「次からは〇〇してもらえるとうれしいです」
ただし、Iメッセージを使えば必ず話し合いがうまくいくわけではありません。相手の反応や二人の関係性によっては、言葉を変えても話し合いが難しいことがあります。
大切なのは、相手を言い負かすための「正しい言い方」を探すことではなく、自分の気持ちと希望をできるだけ具体的に伝えることです。
タイミングと環境を整えることの大切さ
同じ内容でも、相手が疲れていたり、忙しかったりすると、落ち着いて話し合うことが難しくなります。大切な話をするときは、お互いに話を聴ける時間と環境を選ぶことが重要です。
「少し話したいことがあるけれど、今話せる?」と先に確認するだけでも、相手が心の準備をしやすくなります。
特に、怒りや悲しみが強いときには、すぐに結論を出そうとせず、いったん時間を置くことも選択肢です。たとえば、次のような状況では、別の時間に話すほうがよい場合があります。
- どちらかが強く怒っている
- 仕事や家事などで余裕がない
- 深夜で疲れている
- 周囲に人がいて落ち着いて話せない
- スマートフォンやテレビなどに意識が向いている
また、向かい合って話すことに緊張する場合は、散歩をしながら話すなど、二人が落ち着ける方法を試してみることもできます。
重要なのは、「いつ、どこで話すか」を工夫することで、相手をコントロールすることではありません。お互いが話を聴きやすい条件を整えることが目的です。
「聴く」ことも伝え方の一部
パートナーとのコミュニケーションでは、自分の気持ちを伝えることと同じくらい、相手の話を聴くことも大切です。相手の言葉を途中で遮らず、内容を確認しながら聴くことで、お互いの認識のずれに気づきやすくなります。
「アクティブリスニング(積極的傾聴)」では、相手の話に注意を向け、相づちや言葉による反応を示しながら、相手が何を伝えようとしているのかを理解する姿勢が重視されます。
たとえば、次のような反応があります。
- 「そう感じていたんだね」と受け止める
- 「つまり、〇〇ということ?」と確認する
- 「それは不安だったと思う」と感情に触れる
- 相手が話し終わる前に結論や解決策を出さない
ここで大切なのは、「相手の意見に同意すること」と「相手の気持ちを理解しようとすること」は同じではないという点です。
自分とは違う考えであっても、「そういうふうに感じていたんだ」と理解することはできます。お互いに話すことと聴くことができると、問題をすぐに解決できなくても、話し合いそのものを安心できるものにしていきやすくなります。
自分を責めすぎずに気持ちと向き合う方法を知りたい場合は、自分への思いやりを育てるセルフコンパッションについても参考にできます。
うまく伝えられないときは、第三者のサポートも選択肢に
二人だけで話し合ってもうまくいかない場合は、カウンセラーなど第三者のサポートを利用する方法があります。繰り返し同じことで衝突する場合や、話し合うこと自体が難しくなっている場合には、二人だけで解決しようとしなくても構いません。
長く続いている関係では、現在の出来事だけでなく、それまでのコミュニケーションのパターンや、お互いの経験、期待の違いなどが関係していることがあります。そのため、「もっと上手に話せば解決できる」と考えるだけでは、かえって負担が大きくなることもあります。
カウンセリングでは、現在困っていることや気持ちを整理しながら、自分たちだけでは気づきにくかったコミュニケーションのパターンを見直していくことができます。
Otulikaでは、オンラインで利用できるカウンセリングなどのサービス内容を確認できます。自宅など落ち着ける場所から相談できるため、対面で相談することに抵抗がある場合にも利用しやすい方法の一つです。
カウンセリングを利用することは、必ずしも「関係に大きな問題がある」という意味ではありません。「もっとお互いに話しやすくなりたい」「自分の気持ちを整理したい」という段階から相談することもできます。
よくある質問
パートナーへの伝え方で、まず何から始めればいいですか?
まずは、相手に何をしてほしいかを考える前に、自分が今どのような気持ちなのかを整理してみましょう。「モヤモヤする」という感覚を、不安、寂しさ、怒り、悲しさなど具体的な言葉に置き換えると、伝えたいことが明確になりやすくなります。
話し合うといつもケンカになってしまいます。どうすればいいですか?
まずは、話すタイミングと伝え方を見直してみましょう。「あなたはいつも〜」という責める形ではなく、「私は〜と感じた」と自分の気持ちを伝えることで、対立になりにくくなる場合があります。どちらかが強く興奮しているときは、いったん時間を置くことも大切です。
感情を言葉にするのが苦手です。どうしたらうまく伝えられますか?
感情を言葉にすることは、練習によって少しずつ身につけていけます。毎日の終わりに「今日、一番強く感じた気持ちは何だったか」を短く書いてみると、自分の感情に気づくきっかけになります。感情を表す言葉のリストを使うのも一つの方法です。
パートナーがなかなか話を聴いてくれません。どうすればいいですか?
「話を聴いてほしい」と、その希望を具体的に伝えてみましょう。「今日は解決策を考えてほしいのではなく、まず話を聴いてほしい」と伝えることで、相手にも何を求めているのかが伝わりやすくなります。それでも話し合いが難しい場合は、第三者のサポートを利用する方法もあります。
カップルカウンセリングはどんな人が利用するものですか?
カップルカウンセリングは、深刻な問題を抱えている場合だけでなく、コミュニケーションを改善したい、お互いの考えを整理したいと感じている場合にも利用できます。二人だけでは同じ話し合いを繰り返してしまうときに、第三者を交えて話すことで、別の視点から関係を見直せる場合があります。
パートナーへの伝え方を改善することで、メンタルヘルスにも影響がありますか?
パートナーとの関係は、日々の安心感やストレスと無関係ではありません。気持ちを我慢し続けたり、話し合いができない状態が続いたりすると、精神的な負担になることがあります。そのため、自分の気持ちを整理し、安心して話し合える関係をつくることは、心のケアという面でも意味があります。
オンラインカウンセリングでもカップルの相談はできますか?
オンラインカウンセリングでは、自宅などからビデオ通話を利用して相談できます。カップルで相談する場合の対応方法や利用条件はサービスによって異なるため、事前に確認することが大切です。Otulikaで利用できるオンラインカウンセリングについては、日本向けのサービスページから確認できます。
出典
- Gottman, J. M., & Silver, N. (1999). The Seven Principles for Making Marriage Work. Three Rivers Press.
- Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting Feelings Into Words. Psychological Science, 18(5), 421-428. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x
- Shadish, W. R., & Baldwin, S. A. (2005). Effects of behavioral marital therapy: A meta-analysis of randomized controlled trials. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 73(1), 6–14. https://doi.org/10.1037/0022-006X.73.1.6
パートナーとの関係について一人で考え続けることが負担になっているなら、専門家と一緒に気持ちや状況を整理する方法もあります。オンラインで相談できる環境を利用し、自分に合ったペースで話してみることも選択肢の一つです。
