スキーマ療法は、幼少期からの経験などを通じて形成された「自分・他者・世界についての深い信念」に着目する心理療法です。「どうせ自分は愛されない」「失敗してはいけない」といった考え方が、成人後の人間関係や感情、行動パターンに影響することがあります。この記事では、スキーマ療法の基本的な考え方、対象となる悩み、具体的なセッション内容、ほかの心理療法との違いについて解説します。
スキーマ療法とはどのような心理療法ですか?
スキーマ療法は、心理学者ジェフリー・ヤング(Jeffrey Young)が発展させた心理療法です。認知行動療法(CBT)を基盤としながら、愛着、感情、対人関係、過去の経験などにも目を向けます。現在の考え方だけでなく、その背景にある長期的なパターンを理解し、感情や行動の変化につなげていくことを目指します。
「スキーマ」とは、自分自身や他者、世界について持っている、比較的深く根づいた信念や認知のパターンを指します。
たとえば、幼少期の経験から、
- 「自分は愛される価値がない」
- 「人はいつか自分を見捨てる」
- 「失敗すると価値がなくなる」
- 「自分の気持ちより、他人の期待を優先しなければならない」
といった信念が形成されることがあります。
こうした信念は、必ずしも本人が明確に意識しているとは限りません。そのため、現在の出来事に対して強い不安や怒り、悲しみを感じたときに、「なぜここまで反応してしまうのだろう」と感じることもあります。
スキーマ療法では、現在の問題だけを見るのではなく、こうした反応の背景にあるパターンを整理していきます。
どのような「思い込み」がスキーマになるのでしょうか?
スキーマ療法では、幼少期などの経験と関連して形成され、その後も繰り返し活性化される「早期不適応スキーマ」という概念を用います。たとえば、見捨てられる不安、欠陥や恥の感覚、失敗への確信、他人への過度な服従などがあります。ただし、特定のスキーマがあるからといって、それだけで精神疾患があるという意味ではありません。
代表的な例として、次のようなものがあります。
- 見捨てられ・不安定性:「大切な人はいつか自分から離れていく」という不安。
- 欠陥・恥:「本当の自分を知られたら、嫌われる」という信念。
- 失敗:「自分は何をやってもうまくいかない」という確信。
- 服従:「自分の意見や感情を表すと、人間関係が悪くなる」という思い込み。
- 社会的孤立・疎外:「自分は周囲の人とは違い、どこにも属していない」という感覚。
研究では、こうした早期不適応スキーマと抑うつ症状との関連が報告されています。ただし、多くの研究は関連性を調べたものであり、スキーマが一方的に症状の原因になると断定することはできません。
たとえば、職場や恋愛関係で「いつも自分ばかり我慢している」と感じたり、相手から拒絶されることを過度に恐れたりする場合、その反応の背景にどのような信念があるのかを整理することが役立つ場合があります。
スキーマ療法はどのような悩みに用いられますか?
スキーマ療法は、長期間続いている対人関係や感情、自己評価のパターンを扱う心理療法の一つです。特にパーソナリティ障害に対する研究が比較的多く、抑うつなどとの関連も研究されています。一方で、すべての悩みに対してスキーマ療法が最適とは限らず、症状や生活状況、本人の希望などを踏まえて治療法を選ぶことが重要です。
たとえば、次のような悩みについて相談することがあります。
- 恋愛や友人関係、職場などで似た問題を繰り返している
- 相手に嫌われることや見捨てられることへの不安が強い
- 自分を過度に責めてしまう
- 小さな失敗でも「自分には価値がない」と感じる
- 自分の意見を言えず、他人の要求を優先してしまう
- 感情が大きく動いたときに、自分でコントロールすることが難しい
- 長年続く生きづらさについて、その背景を理解したい
- これまでの心理療法で扱いきれなかった問題について相談したい
特に、「同じような出来事が何度も起こる」「頭ではわかっているのに、いつも同じ反応をしてしまう」と感じている場合には、現在の出来事だけでなく、その反応を支えている長期的なパターンを検討することがあります。
また、長期間にわたって気分の落ち込みや意欲の低下が続いている場合には、スキーマだけでなく、持続性抑うつ障害(気分変調症)などについても理解しておくことが大切です。
スキーマ療法のセッションでは何をしますか?
スキーマ療法では、まず現在の悩みとこれまでの経験を整理し、どのようなスキーマや反応パターンが関係しているのかを検討します。そのうえで、認知的な検討だけでなく、イメージを用いた技法や対話、行動パターンの変更などを組み合わせます。具体的な方法や進み方は、相談内容や担当者によって異なります。
一般的には、次のような要素が含まれます。
1. アセスメントと自己理解
最初の段階では、現在困っていることだけでなく、これまでの人間関係や重要な経験、繰り返している感情・行動パターンなどを整理します。
質問票を使うこともありますが、質問票だけでスキーマを「診断」するわけではありません。カウンセラーとの対話を通じて、自分の反応がどのような状況で起こりやすいのかを理解していきます。
2. 感情に働きかける技法
スキーマ療法では、考え方を頭で理解するだけでなく、感情的な体験にも働きかけます。
たとえば、
- 過去の経験をイメージする技法
- イメージの中で過去の場面を再構成する作業
- セラピストとの対話やロールプレイ
- 自分を責める内的な声と距離を取る練習
などが用いられることがあります。
3. 現在の行動パターンを変える
過去を理解するだけで終わらず、現在の生活で繰り返している行動パターンにも目を向けます。
たとえば、「嫌われたくないから断れない」というパターンがある場合、無理をして相手に合わせる以外の選択肢を検討し、日常生活の中で少しずつ実践していきます。
スキーマ療法では、このように自分の感情を理解しながら、より柔軟で適応的な反応を身につけていくことを目指します。
スキーマ療法はどのくらいの期間受けるものですか?
スキーマ療法は、数回で完結する短期的なカウンセリングとは限りません。特に長年続いているパターンやパーソナリティの問題を扱う場合には、一定期間継続して取り組むことがあります。ただし、必要な期間や頻度は悩みの内容、治療目標、本人の状態によって異なるため、一律に「何回で効果が出る」とは言えません。
実際の研究でも、慢性うつ病を対象としたスキーマ療法では、週1回を中心に複数回のセッションを行う治療プロトコルが用いられています。
そのため、スキーマ療法を検討するときには、
- どのような問題を扱いたいのか
- どの程度の頻度で通えるのか
- どのような変化を目標にするのか
- 継続に必要な費用や時間を確保できるか
といった点を、担当者と相談して決めていくことが大切です。
スキーマ療法と認知行動療法(CBT)は何が違いますか?
認知行動療法(CBT)とスキーマ療法は重なる部分がありますが、スキーマ療法では、現在の考え方や行動だけでなく、それらの背景にある比較的深い信念や長期的なパターンにも焦点を当てます。どちらが優れているというより、悩みの内容や治療目標に応じて適切なアプローチを検討します。
それぞれの主な焦点は次のとおりです。
- 認知行動療法(CBT):現在の考え方・感情・行動のパターンを扱います。
- スキーマ療法:深く根づいた信念、感情、対人関係、行動パターンに焦点を当てます。
- 精神力動的アプローチ:無意識的な葛藤や、過去の経験と現在との関係を扱います。
- EMDR:トラウマ記憶などに対する特定の心理療法的アプローチです。
スキーマ療法はCBTだけでなく、愛着理論、精神力動的な考え方、感情焦点化の考え方など、複数の心理療法の要素を取り入れて発展してきました。
CBTで扱われるテーマの一つに、考え方の偏りである認知の歪みがあります。認知の歪みは、現在の出来事をどのように捉えているかを理解するうえで役立つ概念で、スキーマ療法で扱うより深い信念との違いを考える際にも参考になります。
スキーマ療法はオンラインでも受けられますか?
スキーマ療法を含む心理的支援は、オンラインで行われる場合もあります。ビデオ通話などを使えば、自宅などからカウンセラーと話すことができます。オンラインが適しているかどうかは、相談内容、本人の希望、担当者の対応可能な方法などによって異なるため、利用前に確認することが大切です。
オンラインカウンセリングには、次のようなメリットがあります。
- 自宅などから相談できる
- 移動時間を減らせる
- 遠方のカウンセラーにも相談しやすい
- 生活環境に合わせて継続しやすい場合がある
オンラインで受けられる心理的サポートについては、Otulikaのオンラインカウンセリングサービスでも確認できます。
日本でスキーマ療法を受けるとき、何を確認すればよいですか?
スキーマ療法を受けたい場合は、「スキーマ療法に対応しているか」だけでなく、担当者の資格や経験、相談したい問題への対応経験、セッションの進め方、料金などを確認することが大切です。特に、長期的な支援を検討する場合は、無理なく継続できる条件かどうかも重要です。
初回相談の前に、次の点を確認するとよいでしょう。
- スキーマ療法をどのように取り入れているか
- 自分が相談したい問題への対応経験があるか
- セッションの頻度や時間
- 料金と支払い方法
- オンラインまたは対面のどちらに対応しているか
- 必要に応じて医療機関との連携が可能か
カウンセラーとの相性も重要です。初回からすべてを話さなければならないわけではありません。安心して話せるか、説明がわかりやすいか、自分の目標を尊重してもらえるかなども判断材料になります。
スキーマ療法についてよくある質問
スキーマ療法はどんな人に向いていますか?
長年続いている自己否定、対人関係の繰り返しのパターン、見捨てられる不安、他人を優先しすぎる傾向などについて、その背景にある信念や感情のパターンから理解したい方が検討できます。特にパーソナリティ障害に対する研究が蓄積されています。
スキーマ療法は何回くらい受ければよいですか?
必要な回数は一人ひとり異なります。短期間で終わる場合もあれば、長年続いているパターンやパーソナリティの問題を扱う場合には、より長期的に取り組むこともあります。研究で用いられる治療期間も一定ではありません。
スキーマ療法はトラウマにも使われますか?
スキーマ療法では、過去の経験と現在の感情・行動パターンとの関係を扱うことがあります。ただし、トラウマ関連の問題には複数の心理療法があり、スキーマ療法が常に第一選択になるわけではありません。症状や目的に応じて適切な方法を検討します。
スキーマ療法と薬物療法は併用できますか?
心理療法と薬物療法は異なる方法なので、医師による薬物療法を受けながら心理療法を利用することはあります。薬の使用や変更については医師に相談し、カウンセラーにも現在受けている治療について必要な範囲で伝えておくとよいでしょう。
スキーマ療法を自分でできますか?
スキーマに関する書籍やワークブックを使って、自分の考え方や反応パターンを振り返ることはできます。ただし、過去のつらい経験や強い感情を扱う作業では負担が大きくなることもあります。深い問題を扱う場合は、訓練を受けた専門家と進めることが適切です。
カウンセリングを受けていることを周囲に知られたくありません。オンラインでも相談できますか?
オンラインカウンセリングなら、自宅などから相談できるため、通所に伴う負担を減らせる場合があります。ただし、自宅で受ける場合も、周囲に会話を聞かれない場所を確保するなど、プライバシーに配慮した環境を準備することが大切です。
スキーマ療法はどのような資格を持つ人に相談すればよいですか?
スキーマ療法を検討するときは、担当者の専門資格だけでなく、心理療法に関する訓練、スキーマ療法の学習・実践経験、相談したい問題への対応経験などを確認するとよいでしょう。必要に応じて、担当者に具体的なトレーニングや経験について質問しても構いません。
出典
- Young, J. E., Klosko, J. S., & Weishaar, M. E. (2003). Schema therapy: A practitioner’s guide. Guilford Press.
- Malogiannis, I. A., Arntz, A., Spyropoulou, A., Tsartsara, E., Aggeli, A., Karveli, S., & Zervas, I. (2014). Schema therapy for patients with chronic depression: A single case series study. Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 45(3), 319–329. https://doi.org/10.1016/j.jbtep.2014.02.003
- Giesen-Bloo, J., van Dyck, R., Spinhoven, P., van Tilburg, W., Dirksen, C., van Asselt, T., & Arntz, A. (2006). Outpatient psychotherapy for borderline personality disorder: Randomized trial of schema-focused therapy vs transference-focused psychotherapy. Archives of General Psychiatry, 63(6), 649–658. https://doi.org/10.1001/archpsyc.63.6.649
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スキーマ療法についてさらに知りたい場合や、自分の悩みに心理的なサポートが合うか相談したい場合は、オンラインカウンセリングという選択肢もあります。
