慢性疼痛と気分は、互いに影響し合う密接な関係にあります。身体の痛みが続くと気分が落ち込みやすくなり、気分の落ち込みがさらに痛みを強く感じさせるという悪循環が生まれることがあります。厚生労働省の調査によると、慢性疼痛を抱える方の約半数に抑うつや不安の症状が見られると報告されています。この記事では、慢性疼痛と気分がどのように結びついているのか、そのメカニズムと心身両面からのアプローチについてわかりやすくご紹介します。痛みと気持ちのつながりを理解することが、日常生活の質を少しずつ改善していく第一歩になるかもしれません。

慢性疼痛とはどのような状態なのか

慢性疼痛とは、一般的に3か月以上続く痛みのことを指します。腰痛、頭痛、線維筋痛症、関節痛など、さまざまな形で現れます。急性の痛みと違い、明確なけがや炎症が見当たらないケースも多く、「気のせいでは」と周囲に理解されにくい側面があります。

日本では慢性疼痛を抱える方が人口の約23%にのぼるという推計もあり、決して珍しい状態ではありません。しかし、痛みが続くことで仕事や日常生活に支障をきたし、自己効力感や生活の質が低下していくことが多く報告されています。

たとえば、長年にわたる腰痛を抱えながら仕事を続けているAさん(40代・会社員)は、「痛みで眠れない日が続くうちに、何もやる気が起きなくなってしまった」と話します。このような経験は、慢性疼痛を持つ多くの方に共通するものです。

痛みが気分に影響するメカニズム

痛みが長引くと、脳の神経系に変化が生じることがわかっています。痛みの信号を処理する部位と、感情や気分を司る部位は脳内で密接に連携しており、慢性的な痛みの刺激が感情の調節にも影響を及ぼすと考えられています。

具体的には、慢性疼痛によってセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが乱れることがあります。これらは気分の安定にも深く関わっており、その乱れが抑うつ感や不安感につながりやすいと考えられています。2021年にLancet誌に掲載されたレビューでも、慢性疼痛と抑うつの共通した神経生物学的基盤が示されています。

また、痛みによる睡眠の乱れも気分に影響します。痛みで眠れない→疲労が蓄積する→気分が落ち込む、というサイクルは多くの方が経験されています。

気分の落ち込みが痛みを強める「痛みの増幅」

気分と痛みの関係は一方通行ではありません。落ち込んだ気分や不安が、痛みをより強く、より広く感じさせることも知られています。これを「痛みの中枢性感作」と呼ぶことがあります。

抑うつ状態になると、痛みに対する耐性が低下し、普段なら気にならない程度の刺激でも強い痛みとして感知されやすくなります。また、気分が沈むと身体活動が減少し、筋肉の緊張や血流の悪化が痛みをさらに悪化させる場合もあります。

「痛いから動けない」「動けないから気分が沈む」「気分が沈むからもっと痛く感じる」——このような悪循環に気づいていない方も多く、その気づきだけでも心理的な負担が少し軽くなることがあります。

慢性疼痛に対する心理的アプローチの可能性

近年、慢性疼痛の管理において心理的なアプローチが注目されています。認知行動療法(CBT)は、痛みに対する思考パターンや行動を少しずつ変えていくことで、痛みの感じ方や生活の質を改善することが示されています。

2022年のコクランレビューでは、CBTが慢性疼痛患者の痛みの強度、抑うつ症状、日常機能の改善に有効であるという証拠が報告されています。日本においても、心療内科や慢性疼痛専門外来でCBTが取り入れられるケースが増えています。

また、マインドフルネスに基づくストレス低減法(MBSR)も、痛みへの過度な注目を和らげ、気分の安定につながるアプローチとして研究が進んでいます。「痛みをなくす」というよりも「痛みとの付き合い方を変える」視点が、長期的には助けになることがあります。

カウンセリングが慢性疼痛に果たせる役割

慢性疼痛を抱えながら生きていると、周囲への申し訳なさや「また痛みを訴えるのは…」という遠慮から、気持ちを打ち明けられないまま孤立してしまう方も少なくありません。そのような気持ちを安心して話せる場として、カウンセリングが一つの選択肢になることがあります。

カウンセラーは診断や治療を行うのではなく、痛みによる感情的な負担、生活上の困りごと、自己評価の変化などを一緒に整理していく役割を担います。「誰かに話を聞いてもらえた」という体験そのものが、気分の改善につながることも多いです。

オンラインカウンセリングであれば、体調の良いタイミングに自宅から利用できるため、外出が難しい慢性疼痛の方にも取り組みやすい形です。匿名での相談も可能なプラットフォームもあり、周囲に知られる心配なく利用できます。

日常でできる小さなセルフケアのヒント

カウンセリングや専門的な治療と並行して、日常の中でできる小さなケアも気分と痛みの悪循環を和らげるきっかけになることがあります。無理のない範囲で試してみるのも一つの方法です。

たとえば、痛みの日記をつけることで「今日は比較的楽だった」という小さな変化に気づきやすくなります。痛みがすべてではないと感じられる瞬間を記録していくことが、気分の安定につながることがあります。また、温かいお風呂でゆっくりする、好きな音楽を聴く、短い散歩をするなど、身体に負担をかけない形で気分転換を図ることも助けになることがあります。

大切なのは「頑張りすぎない」こと。痛みがある日に無理をしてしまうと、翌日以降の痛みが増すこともあります。自分のペースを大切にすることが、長い目で見たときの回復につながります。

よくある質問

慢性疼痛と抑うつはどちらが先に起こるのですか?

どちらが先とは一概には言えません。痛みが長引いて気分が落ち込むケースもあれば、もともとあった抑うつが痛みへの感受性を高めるケースもあります。重要なのは、両者が互いに影響し合っているという点で、どちらか一方だけに注目するよりも、心身両面からアプローチすることが効果的とされています。

慢性疼痛 気分の問題は「気のせい」ではないのですか?

「気のせい」では決してありません。慢性疼痛による気分の変化は、脳内の神経伝達物質の変化や神経系の反応として科学的に説明されています。2021年のLancet誌掲載のレビューでも、慢性疼痛と抑うつには共通する神経生物学的なメカニズムがあることが示されています。痛みの辛さを周囲に理解してもらいにくい状況でも、その辛さはれっきとした身体的・心理的な現実です。

カウンセリングは慢性疼痛に効果がありますか?

カウンセリング、特に認知行動療法(CBT)は、慢性疼痛患者の生活の質や気分の改善に効果があるという研究結果が多数あります。痛み自体をなくすというよりも、痛みとの向き合い方を変え、気分や日常機能を改善することを目的としています。医療的な治療と組み合わせることで、より包括的なサポートが得られることがあります。

オンラインカウンセリングでも慢性疼痛の悩みを相談できますか?

はい、相談できます。体調の波がある慢性疼痛の方にとって、自宅から予約・受講できるオンラインカウンセリングは特に取り組みやすい形式です。移動の負担がなく、体調の良い時間帯に合わせて利用できるのも大きな利点です。

カウンセリングの費用はどのくらいかかりますか?

オンラインカウンセリングの相場は1回あたり5,000円〜12,000円程度が一般的です。プラットフォームやカウンセラーによって異なりますが、初回無料や低価格のお試しセッションを提供しているサービスもあります。まずは費用や内容を確認してみるのも一つの方法です。

慢性疼痛があるとき、どのタイミングでカウンセラーに相談すればよいですか?

「痛みのせいで気分が落ち込んでいる」「何もやる気が起きない」「痛みのことを誰かに話したい」と感じたときが一つのサインかもしれません。大きな危機があるときだけでなく、日常的なモヤモヤを整理したいときにもカウンセリングを活用してみるのは自然なことです。

痛みと気分の悪循環を自分で断ち切ることはできますか?

小さなセルフケア(痛みの日記、軽い身体活動、睡眠環境の整備など)が助けになることはあります。ただ、長く続く悪循環は一人で抱えるよりも、専門家のサポートを借りながら取り組む方が効果的なことも多いです。自分だけで何とかしなければと思わずに、サポートを求めることも大切な選択肢の一つです。

出典

  • 厚生労働省. (2021). 慢性疼痛対策事業について. 厚生労働省ウェブサイト.
  • Treede, R. D., Rief, W., Barke, A., Aziz, Q., Bennett, M. I., Benoliel, R., … & Wang, S. J. (2019). Chronic pain as a symptom or a disease: the IASP Classification of Chronic Pain for the International Classification of Diseases (ICD-11). Pain, 160(1), 19–27. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000001384
  • Velly, A. M., & Mohit, S. (2018). Epidemiology of pain and relation to psychiatric disorders. Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry, 87, 159–167. https://doi.org/10.1016/j.pnpbp.2017.05.012
  • Williams, A. C. de C., Fisher, E., Hearn, L., & Eccleston, C. (2020). Psychological therapies for the management of chronic pain (excluding headache) in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews. https://doi.org/10.1002/14651858.CD007407.pub4
  • 世界保健機関(WHO). (2022). World Mental Health Report: Transforming Mental Health for All. WHO.
  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP). (2023). 精神疾患と身体疾患の関連に関する研究報告. NCNP.
  • Hooten, W. M. (2016). Chronic pain and mental health disorders: shared neural mechanisms, epidemiology, and treatment. Mayo Clinic Proceedings, 91(7), 955–970. https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2016.04.029

もし慢性的な痛みと気分のつらさを一人で抱えているなら、カウンセラーに話してみるのも一つの方法です。痛みの辛さも、気持ちの重さも、誰かと一緒に整理することで少し楽になることがあります。Otulikaでオンラインカウンセリングを予約する

Otulika Team Avatar